再発・転移頭頚部癌に対する治療方針 KEYNOTE-048試験

再発・転移頭頚部癌に対する治療方針

■プラチナ抵抗性   ニボルマブ

■プラチナ感受性   ペムブロリズマブ単独or併用療法

  ・プラチナ[CDDP/CBDCA(eGFR40未満)]、5-FU併用忍容性あり

   CPS≧20 単独 CPS<19併用

  ・プラチナ、5-FU併用忍容性なし(PS3-4、Age≧80、合併症から総合的判断)

   CPS≧1 単独 CPS<1ペムブロリズマブ療法行わず、PCE療法

 

併用時はCDDP80mg/m2 ,  5-FU800mg/m2(KEYNOTE048試験の投与量20%減)

 

(頭頚部癌 50(1):13-18,2024)

 

国際共同第Ⅲ相試験(KEYNOTE-048試験)

Burtness B et al. Lancet 2019; 394: 1915-1928.

【対象】再発又は遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮癌患者(化学療法歴ない患者882例)

【目的】有効性及び安全性について

キイトルーダ®単独療法orキイトルーダ®+プラチナ製剤及び5-FUの併用療法

Vs

標準治療(セツキシマブ+プラチナ製剤+5-FU)

 

【デザイン】国際共同無作為化非盲検実薬対照第Ⅲ相試験[優越性検証試験]

【方法】

  • キイトルーダ®単独療法群(200mgを3週間間隔で点滴静注)
  • キイトルーダ®+プラチナ製剤及び5-FU併用群(キイトルーダ®200mgとシスプラチン100mg/m2又はカルボプラチンAUC5を1日目、5-FU1000mg/m2/日を1日目~4日目まで持続静注を3週間間隔で投与)
  • 対照群(セツキシマブを1週間間隔投与で初回のみ400mg/m2、以降は250mg/m2、シスプラチン100mg/m2又はカルボプラチンAUC5を1日目、5-FU1000mg/m2/日を1日目~4日目まで持続静注を3週間間隔で投与)

 

3群に1:1:1の比で無作為に割り付け。

画像評価は無作為化の9週間後、以降は6週間毎、12ヵ月経過後は9週間毎に画像診断により腫瘍縮小効果を判定し、疾患進行(PD)、許容できない有害事象の発現等による投与中止まで、最長24ヵ月間キイトルーダ®を継続した。各群とも、プラチナ製剤及び5-FUの投与は最大で6サイクルまでとした。

【評価項目】主要評価項目:ITT集団及びPD-L1発現別の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)

 

副次評価項目:ITT集団及びPD-L1発現別の6ヵ月及び12ヵ月時点のPFS率、奏効率(ORR)、欧州がん研究・治療機構(EORTC)(QLQ-C30)の全般的健康状態(QoL)、全般的なQoL、疼痛及び嚥下能の悪化までの期間(TTD)及び安全性

探索的評価項目:奏効期間(DOR

【判定基準】PFS、ORR、DORは盲検下独立判定委員会(BICR)がRECISTガイドライン1.1版に基づき評価した。

 

<頭頸部癌又は頭頸部腫瘍における各薬剤の用法及び用量>

シスプラチン

用法・用量(抜粋)

頭頸部癌には、D法を標準的用法・用量とし、患者の状態によりB法を選択する。

D法:シスプラチンとして10~20mg/m2(体表面積)を1日1回、5日間連続投与し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。

B法:シスプラチンとして50~70mg/m2(体表面積)を1日1回投与し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。

なお、投与量は疾患、症状により適宜増減する。

カルボプラチン

用法及び用量(抜粋)

〈頭頸部癌、肺小細胞癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌〉

通常、成人にはカルボプラチンとして、1日1回300~400mg/m2(体表面積)を投与し、少なくとも4週間休薬する。これを1クールとし、投与を繰り返す。

なお、投与量は、年齢、疾患、症状により適宜増減する。

5-FU

用法及び用量(抜粋)

6.3 頭頸部癌及び食道癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合

他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において、通常、成人にはフルオロウラシルとして1日1000mg/m2(体表面積)までを、4~5日間連日で持続点滴する。投与を繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。本剤単独投与の場合には併用投与時に準じる。なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。

 

患者背景

キイトルーダ®併用群

主要評価項目 全生存期間:OS(優越性検証試験)

ITT集団におけるOS中央値はキイトルーダ®併用群で13.0ヵ月(95%CI:10.9, 14.7)、対照群で10.7ヵ月(95%CI:9.3, 11.7)でした。対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.77(95%CI:0.63, 0.93)であり、OSを有意に延長しました(p=0.00335、層別ログランク検定[片側]、有意水準α=0.0041)(検証的解析結果)。

 

主要評価項目 PD-L1発現別全生存期間:OS(優越性検証試験)

CPS≧20の患者における対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.69(95%CI:0.51, 0.94)であり、統計学的な有意差は認められませんでした(p=0.00984、層別ログランク検定[片側]、有意水準α=0.0018)(検証的解析結果)。
CPS≧1の患者における対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.71でした。
多重性を考慮した解析方針に従って、CPS≧20で優越性が検証されなかったため、CPS≧1では有意差検定を実施しませんでした。

[補足]最終解析におけるPD-L1発現別にみた全生存期間(OS)

主要評価項目 無増悪生存期間:PFS(優越性検証試験)

ITT集団におけるPFS中央値はキイトルーダ®併用群で4.9ヵ月(95%CI:4.7, 6.0)、対照群で5.1ヵ月(95%CI:4.9, 6.0)でした。対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.92(95%CI:0.77, 1.10)であり、PFSの優越性は認められませんでした(p=0.16971、層別ログランク検定[片側]、有意水準α=0.0002)(検証的解析結果)。

主要評価項目 PD-L1発現別にみた無増悪生存期間:PFS

CPS≧20の患者における対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.73(95%CI:0.55, 0.97)であり、統計学的な有意差は認められませんでした(p=0.01622、層別ログランク検定[片側]有意水準α=0.0017)(検証的解析結果)。CPS≧1の患者における対照群に対するキイトルーダ®併用群のハザード比は0.82でした。多重性を考慮した解析方針に従って、CPS≧20で優越性が検証されなかったため、CPS≧1では有意差検定を実施しませんでした。

 

副次評価項目 奏効率:ORR[第2回中間解析]

ORRはキイトルーダ®併用群35.6%(95%CI:30.0, 41.5)、対照群36.3%(95%CI:30.7, 42.3)でした。奏効までの期間中央値はキイトルーダ®併用群2.1ヵ月(範囲:1.4, 13.7)、対照群2.1ヵ月(範囲:1.3, 6.2)でした。

探索的評価項目 奏効期間:DOR

奏効が認められたITT集団におけるDOR中央値はキイトルーダ®併用群6.7ヵ月(範囲:1.6+, 30.4+)、対照群4.3ヵ月(範囲:1.2+, 27.9+)でした。

 

キイトルーダ®単独群

主要評価項目 全生存期間:OS(優越性検証試験)

ITT集団におけるOS中央値はキイトルーダ®単独群で11.6ヵ月(95%CI:10.5, 13.6)、対照群で10.7ヵ月(95%CI:9.3, 11.7)でした。対照群に対するキイトルーダ®単独群のハザード比は0.85(95%CI:0.71, 1.03)であり、OSの非劣性が示されました(p=0.0001399[非劣性p値]、層別ログランク検定[片側]、非劣性マージン:1.2)(検証的解析結果)。また、対照群に対するキイトルーダ®単独群の優越性は認められませんでした(p=0.04563[優越性p値]、層別ログランク検定[片側]、α=0.0117)(検証的解析結果)。

 主要評価項目 PD-L1発現別みた全生存期間:OS(優越性検証試験)

CPS≧20の患者における対照群に対するキイトルーダ®単独群のハザード比は0.61(95%CI:0.45, 0.83)であり、OSを有意に延長しましたp=0.00074、層別ログランク検定[片側]、有意水準α=0.0024)(検証的解析結果)。
また、CPS≧1の患者における対照群に対するキイトルーダ®単独群のハザード比は0.78(95%CI:0.64, 0.96)であり、OSを有意に延長しましたp=0.00855、層別ログランク検定[片側]、有意水準α=0.0109)(検証的解析結果)

 

主要評価項目 無増悪生存期間:PFS(優越性検証試験)*1

ITT集団におけるPFS中央値はキイトルーダ®単独群で2.3ヵ月(95%CI:2.2, 3.3)、対照群で5.2ヵ月(95%CI:4.9, 6.0)でした。多重性を考慮した解析方針に従って、CPS≧20で優越性が検証されなかったため、ITT集団では有意差検定を実施しませんでした。

主要評価項目 PD-L1発現別にみた無増悪生存期間:PFS

CPS≧20の患者における対照群に対するキイトルーダ®単独群のハザード比は0.97(95%CI:0.74, 1.27)であり、統計学的な有意差は認められませんでした(p=0.41028、層別ログランク検定[片側]有意水準α=0.0016)(検証的解析結果)。CPS≧1の患者における対照群に対するキイトルーダ®単独群のハザード比は1.15でした。多重性を考慮した解析方針に従って、CPS≧20の患者で優越性が検証されなかったため、CPS≧1の患者では有意差検定を実施しませんでした。

副次評価項目 奏効率:ORR[第2回中間解析]

ORRはキイトルーダ®単独群16.9%(95%CI:12.9, 21.7)、対照群36.0%(95%CI:30.6, 41.7)でした。奏効までの期間中央値はキイトルーダ®単独群2.1ヵ月(範囲:1.5, 9.1)、対照群2.1ヵ月(範囲:1.3, 6.2)でした。

探索的評価項目 奏効期間:DOR(探索的評価項目)

 奏効が認められたITT集団におけるDOR中央値はキイトルーダ®単独群20.9ヵ月(範囲:1.5+, 34.8+)、対照群4.5ヵ月(範囲:1.2+, 30.6+)でした。